「福井そばランキングTop20」からの続きです

「山かけそば」は、店の個性を楽しむメニュー
福井のそば屋さんの魅力は、昔の雰囲気が残る古い街並みの、普通の民家の一軒が、そのままそば屋さんになり、四季の風景の中に溶け込んでいることです。こういうそば屋さんに足を踏み入れると、田舎の親戚の家に来たような懐かしさが込み上げてきます。
『手打ちそば八助』は、まさに福井のそば屋さんの典型ともいえる、庶民の名店。
店の前に行列を作るお客の、ほぼ8割が注文するのが「山かけそば」です。「山かけ」は、多くの店がお品書きに載せている人気のメニューですが、店によってこれほど味に違いが出るそばも珍しいのです。
山芋の選び方から、その店の個性が出るし、おろし金で擦りおろすところもあれば、すりこぎで細かく擦る店もあります。また、芋に粗い粒々を入れたり、出汁を混ぜたりと、山芋の調理だけ見ても千差万別です。
さらにそこに、どういうそばを合わせるかが大問題。細いそば、太いそば、硬いそば、しなやかなそば、粗挽きのそばなど、店によって麺は様々に変わります。『手打ちそば八助』のそばは、特別な食感なので、山芋との組み合わせは絶妙。そして、どういう汁をかけるかでも、店ごとに個性を主張できる、奥深いメニューなのです。
『手打ちそば八助』の汁は、淡口醤油と濃口醤油を合わせて使い、ざらめと味醂で甘味をつけて、出汁はうるめと鰹節。とてもデリケートな凝った汁で、この店ならではの完成された「山かけそば」の味を作り出しています。
一口食べれば、細身のそばのツルツル感と、ちょっと粗めに擦られた山芋のツルツル感。それをサポートする玉子の黄身のツルツル感が口の中で交錯し、『手打ちそば八助』がなぜ人気なのか、「なるほど」と飲み込むことができます。
製粉工場に併設されたそば店で最高のそばを味わう

『手打ちそば八助』の店の前には、『義野商店』という古い看板がかけられています。もともと大正時代からこの地で製粉業を営んでいたのですが、主人の義野正雄さんが、手作業で作った美味しいそば粉を生かすために、そば屋を併設したのがこの店の始まり。だから、そばを食べるお店の隣りが、製粉の作業場になっています。扉のガラス越しに、大正時代の面影を残すレトロな製粉機が並んだ作業場を眺められるのも、この店ならではの特典です。
お店で使っている材料は、地元の勝山在来です。黒い殻に包まれたままの玄そばを仕入れ、実を割るところから、石臼で挽いて、ふるいにかけ、唐箕(とうみ)で殻を飛ばして仕上げます。
この作業次第で、そばの味は生かしも殺しもできるのですが、義野さんは長年鍛えられた名人なので、失敗することはありません。季節によって目まぐるしく変化していくそばの実の状態に合わせて、秘伝の技を使い分けます。こうして作られたそば粉を手打ちして、『手打ちそば八助』のそばが完成します。
繊細なおいしさの「おろしそば」

「山かけそば」の次に人気なのが、越前(福井県)の郷土そばとして知られる「おろしそば」。こちらも、福井県にはたくさんのそば屋さんがあって、数えきれないほどのおろしそばがありますが、『手打ちそば八助』の「おろしそば」には、特に熱心なファンがいます。
数ある「おろしそば」の中でも、際立って繊細なおいしさを備えているのが『手打ちそば八助』の「おろしそば」。店の前には行列ができますが、並んで食べる価値が十分にあるそばなのです。



【店情報】
手打ちそば ハ助
【電話】
0779-88-0516
【住所】
福井県勝山市栄町1-1-8
【アクセス】
えちぜん鉄道勝山永平寺線、勝山駅から徒歩約15分
【営業時間】
(月、火、水、土、日、祝日)
11時-14時
【定休日】
木曜、金曜
【支払い】
カード、電子マネー、QRコード決済不可
席数 10席 (相席)
個室 なし
全席禁煙
駐車場有り